君の声、僕の歌姫

「お前じゃないって分かったなら、もう用はないか」


ラウトがその場を去ろうとしたその時でした。

魔法使いがラウトを引きとめました。


「ふむ……ラウトはスティーの声を奪った原因が自分と考えているのか」


ラウトはその事を告げていなかったからなのか、酷く驚きました。

流石は魔法使いと言うべきでしょうか。

その驚きを隠しながらもラウトは魔法使いの問い掛けに答えました。


「そうだけど……なんか俺が死にかけていたら、
誰かが声と引き換えに俺を助けるってスティーに言ったんだとよ」


すると魔法使いはニヤリと、何かを企んだかのような笑みを浮かべました。