君の声、僕の歌姫

「操作の仕方が分からないんだけど……」


ハルトが前に乗ると、フェアギスにそう尋ねました。

フェアギスは豪快に笑うと“落ちないように捕まるだけで良いわ”と言いました。

後ろに乗っていたハルトはキルシュにそう言うと、キルシュは何度も首を縦に振りました。

ラウトからしてみれば意識がある時に乗るのは初めてでした。

なので狼に乗る事にやや不安を覚えていました。が、


「それじゃ、行くわよー!」


そのフェアギスの合図とともに何にも負けない速さで走り出す魔物達。

そんな不安も何処かへ吹き飛んでしまっていました。

景色を楽しむ余裕もなく、ラウトの気付いた時には既に目的地の集落でした。