君の声、僕の歌姫

「まあそれは冗談として」
「冗談だったのかよ!?」
「何故、そうならなければならなかった?」


ハルトがキルシュも思ったであろう事をフェアギスに聞き出そうとしました。

フェアギスは一瞬ためらいましたが、意を決したかのように喋り出しました。


「あー……えーっとね……」


それはフェアギスが“ヴィンデ”だった頃の話です。

ヴィンデはとある組織でスパイとして活動していました。

魔物使いとしての腕も相当なもので、自身が危機にさらされた時には武器にもなりました。

そんなある日の事。とある大都市の調査をしていた時のことでした。

欲しい情報があと少しで入る、という所で敵対する組織の人間に素性を知られてしまいました。