君の声、僕の歌姫

走り続けたラウトの目の前には、古びた屋敷がありました。

それは誰も近付かない場所です。

何故ならばそこには悪魔のような魔法使いがいる、という噂があったからです。

ローゼからも小さい時から入ったりするな、と言われていたラウトですが、

そんな言葉を無視して古びたその扉を蹴破りました。


「おい、魔法使い! いるんだろ? 返事をしやがれ」


部屋中にその声は響き渡り、何処までもエコーが続きました。

そのエコーが静まった後、その瞬間を待ってましたと言わんばかりに……


「おやおや……何時ぶりの来客かねえ……」


老人の声が響きました。男か女かも、何処から聞こえているかも分かりません。