君の声、僕の歌姫

するとローゼはある疑問に気付きました。

スティーの言葉にはある物が足りなかったのです。


「ねえ、“誰に”差出したの?」


そう。誰に差出したかが記されていませんでした。

それはローゼだとは言えないスティー。正しくはローゼの姿を借りた誰か。

スティーはその事実を伏せて、こう書きました。


『姿は分かりません。声しか聞こえなかったので。
威圧感はありましたが、男か女かも分かりませんでした』


先程まで落ち込んでいたラウトでしたが、

その言葉を見て真先に外へと飛び出しました。

その場にいたほぼ全員が止めるのも無視して。