君の声、僕の歌姫

スティーは少し戸惑いながらも、微かに震えながら紙に字を書きました。


『私はラウトを助ける為に、声を差出しました』


その文字を見た男は“ほらみろ”と言わんばかりに、

ローゼとラウトの姉弟を見つめました。

自分を助ける為に声を差出したというスティー。

ラウトは酷く取り乱しました。


「どうして俺なんかの為に……! スティーはこの村に必要な存在なんだぞ!? それなのに……」


言葉を詰まらせるラウトにスティーは微笑み、また一言書きました。


『ラウトだってこの村に必要な存在だよ?』


と。ラウトは否定をしたくても、それは出来ませんでした。