君の声、僕の歌姫

事情を聴くという名目があったからなのか、

教会側はすんなりとスティーに会わせてくれました。

男達と共に現れたスティーの手には、ペンと紙が握られていました。

泣いていたのでしょうか?彼女の眼は少し腫れているようにも見えます。


「スティー……! 良かった」


思わず抱きつきたくなるのを堪え、ラウトはたった一言そう言いました。

しかしスティーは微笑むだけ。何も言葉を発そうとはしませんでした。

すると中年の男が早速本題に入りました。


「声が出なくなった理由を聞かせてはくれませんか?」


先程までの横暴な態度は何処へやら。スティーの前ではそんな姿は見られません。