君の声、僕の歌姫

「聞けばラウトは死にかけだったそうじゃないか。
もしかしたらあの子が女神の力をあいつに酷使したとは思わないのか?」

(そうかもしれない。でも女神の力と言えどもただの歌声。そんな事はない)


ラウトは自分にそう言い聞かせました。

スティーの歌声は癒すようなものであっても、

死にかけの人間を一気に全快させるような力はありません。

立ち尽くすラウトの姿に気付いた男は、怒りの矛先を今度は彼にぶつけました。

ラウトの口から洩れた言葉は、


「スティーに聞けば早い話なんじゃないか?」


それはラウトがスティーに会いたいという願いでもありました。