恋人は専属執事様Ⅰ

良かった、今日はお叱りなしだ!
違う、そうじゃない!
「昨日のことは大丈夫です。河野さんはもうお怪我はよろしい…のですか?」
あ、ちょっと噛んじゃった。
鷹護さんをチラッと見ると…あれ?一瞬だけど視線を外された?
新しいNGサイン?
「お嬢様は本当に何もご存知ないのですね」
振り向けば笑いを堪えて微笑む宝井さん。
後ろからすごい殺気を感じて振り向けない…
「鷹護さんがそんなに殺気立つから、お嬢様が怯えていらっしゃいますよ?」
おかしそうにクックと笑い声を噛み締める宝井さん。
そして、殺気の発生源はやっぱり鷹護さんなのね…ご免なさい。
「宝井、それ以上無駄口を叩くな」
いつもよりトーンの低い、地の底を這うような恐ろしい声は鷹護さんのもの。
あれ?怒りの鉾先は私じゃなくて宝井さん!?
思わず鷹護さんをチラッと見上げて、その形相に見上げたことを直ぐに悔やむ私。
今までで一番恐い……
「お嬢様、鷹護さんは虫の居所が悪いようですので、他をお散歩いたしましょう」
そう言って微笑んだ宝井さんに促されて、私は仕方なく中庭を後にした。
振り返ると鷹護さんが私に一礼したけど、その表情は見えなかった。
「お嬢様は可愛らしいお顔に似合わず残酷なことをなさいますね」
笑顔は天使のような宝井さんが、またブラックモード全開で分からないことを言い始める。
「宝井さんこそ、さっきから分からないことばかりで困ります」
ちょっとムッとした顔で宝井さんを見上げると、宝井さんが一瞬だけ目を見開いて、キュッと細める。
「そこまで鈍いと少し鷹護さんに同情するな…」
ボソッと宝井さんが毒づいた。
鈍いって私のこと?失礼な!
宝井さんを抗議の目で睨めば、いつの間にか私は校舎の窪みに背中を押し付けられ
「だからそんな顔で見るなよ、ここでヤッて欲しい?」
と囁く宝井さんの腕の中で身動きを封じられていた。
最近やたらとこの状況になるけど、やっぱり慣れるのは無理!
「離っ…」
目の前にある宝井さんの胸をグイグイ押すけどビクともしない。
華奢に見えて意外としっかり筋肉が付いた宝井さんの体を押し返そうと暴れる私に
「バカだな、そんな抵抗は男が余計に興奮するだけって解らない?」
と笑って、宝井さんの掌がスルリと私の内腿へ這う。