恋人は専属執事様Ⅰ

?マークを頭の上に沢山浮かべながら、私は鷹護さんと河野さんを交互に見上げた。
鷹護さんと目が合った瞬間にキッと睨まれ、身を竦めると声に出さずに口パクで『め』と言われた。
め…め?目!?あっ…上目遣い!
コクコクと頷いて視線を落とすと、隣りで河野さんがお腹を抱えて笑い出した。
「…プッ!ハハッ…ハハハッ!!ヤベェ、マジでウケる!鷹護……おまっ、チョーだせぇー!」
突然の出来事に驚く私に、鷹護さんが流石にバツの悪そうな顔で
「お嬢様、申し訳ございません。河野とは幼い頃から付き合いがございまして、昔から発作的に笑いが止まらなくなることが…」
と珍しく歯切れの悪い口調で言って、また深々と頭を下げた。
こんなことまで鷹護さんが謝ることなの?と思いながら、目線を河野さんへ移す。
鷹護さん程ではないけどかなり長身の体を折り曲げて、私より低い目線で笑う河野さんを見下ろす。
「あの…発作はどのくらいで収まるんでしょう?」
鷹護さんへ視線を移して尋ねる。
上目遣いにならないように、顎を上げて首を限界まで後ろに倒して……
「こうなりますと長引くと存じますので、よろしければわたくしが代わりに午後からお仕えさせていただきますが…」
そう説明してくれる鷹護さんが歪んで見えて、全身からザーッと血の気が引くのを感じながら私の体が傾き始める。
視界が段々、壊れたテレビみたいに赤と緑の荒い粒子になって、最後には黒くなって行く。

あぁ…ずっと立ちっ放しだったのに、急に頭を上げ下げしたから、貧血が…

地面に倒れると思ったけど、それより早く鷹護さんが私を抱き留めてくれたみたい。
視界は真っ暗で何も見えないけど、一昨日と同じ温かさに包まれているのを感じるから…
遠くで私に呼び掛ける鷹護さんの声が聞こえる。
大丈夫、少し休めば治るから…
もう少しだけ休ませて……
声に出した積もりの言葉は、何一つ声にならずに鷹護さんに伝わらなかった。

「やべぇ、久々に笑い過ぎて腹筋攣った…お嬢は貧血?」
漸く笑い止んだ河野さんを尻目に、鷹護さんは私を抱き上げると
「恐らく脳貧血だ。河野、保健室まで自力で歩け!」
と言って、私に振動が伝わらないように気を配りながら足を急いだ。
「俺も抱っこ~」
と言う河野さんを無視して…