恋人は専属執事様Ⅰ

「お嬢様、お待たせしてしまいまして大変申し訳ございません。お疲れになりましたでしょう?それではお屋敷へ戻りましょう」
と私に優しく微笑み掛けながらそう言うと、鷹護さん同様教室から一歩出たところで振り向くと
「それでは失礼いたします」
とクラスに残っている生徒たちに一礼して、私の方を向くと車までエスコートしてくれた。

今日のアフタヌーンティーはお砂糖たっぷりのミルクティー。
私の好きなアールグレイの香りを胸いっぱいに吸い込んで、至福のひととき。
おやつには私の大好きなガトーショコラがちゃんとある。
幸せ~!
満面の笑みを浮かべる私に、藤臣さんが優しい笑顔で
「淑乃様のお顔からお疲れが取れて、本当に喜ばしいことでございます」
と言ってくれる。
鷹護さんのスパルタを見越して、私が元気になれるメニューを用意しておいてくれる藤臣さんてすごい!

夕ご飯もしっかりたっぷり美味しくいただいてしまい、私はウトウトしながら予習復習をする羽目に…
明日からは少しご飯の量を減らしてもらおう。
そして、早起きしてお庭をお散歩しよう。

翌朝、アラームに気付かず藤臣さんに起こしてもらい、私の目論見はまんまと失敗した…
「それでは明日からは少し早めに参ります」
と藤臣さんが優しい笑顔で慰めてくれたけど情けない…

「本日淑乃様にお仕えする執事候補生は確か河野君でございますね」
通学の車の中でそう藤臣さんに訊かれた。
そう、確か今日は河野さんの日。
どんな面白い言葉が聞けるか、ちょっと楽しみかも…
私がそう言うと
「淑乃様のようなお方でしたら、河野君も今回は試用期間くらいは保てば良いのですが…」
と苦笑いの藤臣さん。
へっ?河野さんってどんだけ長持ちしない人なの!?
驚く私を見て、今度は楽しそうに
「河野君がどれだけ保つか、楽しみにしております」
と笑いながら藤臣さんが言った。

教室の前には既に河野さんの姿があり、私を河野さんにバトンタッチした藤臣さんが
「河野君、今回は頑張って長くお仕えしてくださいね」
と言ったから、私はその場で固まり、何も知らない河野さんは人懐こい笑みで
「はい、誠心誠意を以てお嬢様にずっとお仕えいたします」
と応えていた…
きっと、根っから素直なんだろうな…人にも自分にも。