【side:藤臣】
…ヤバかった。
淑乃様の無自覚さはどうにかならないか?
ご自分の魅力に気付かず、気取らず気さくで天真爛漫な彼女が好きだ。
でも、彼女にとって私は特別ではない。
身の回りの世話をする為に接する時間が長いから、今は一番気を許せる存在かも知れないが、所詮はただの執事。
だから、この想いは誰にも覚られてはならない。
解ってはいるが、彼女に近付く者・彼女が笑い掛ける者に対して牽制してしまう。
嫉妬なんて子供染みた幼稚な感情に、容易く支配されてしまう。
らしくない。
そう、全く私らしくない。
誰かに頼んで見合いでもするか?
そんなことで忘れられる程度の想いなら、仕事に専念すれば忘れられる。
仕事が覚束なくなるから困っている。
いっそのこと、彼女が早く結婚してくれたら…
お相手が鷹護様では、早くとも後5年は結婚しないだろう。
それでは私が保たない。
仕事が覚束ないのは私のポリシーに反する。
大体、この年で小娘に入れ込むことがおかしい。
彼女は聡様の子だ。
私にもあのくらいの年の子がいてもおかしくない。
一時の気の迷いだ。
大丈夫だと言い聞かせ、淑乃様のお部屋のドアをノックした。
「淑乃様、失礼いたします」
声を掛けたが反応がない。
デモンストレーションに興奮されたご様子から、恐らくお休みになっていらっしゃるのだろう。
一応ご様子を窺っておこう。
再びドアをノックし、お声を掛けてお部屋へ入る。
ソファーから淑乃様の安らかな寝息が聞こえる。
こちらからは背もたれに遮られ淑乃様のお姿が確認出来ない。
ソファーを回り込んで淑乃様のお姿を確認し、一時の気の迷いと誤魔化せない想いが溢れる。
伏せた長い睫が白磁のような肌に影を落とし、僅かに開いた唇に隠れた赤い舌を捉えた。
ゾクリと背筋を何かが走る。
「淑乃様…」
喉が渇いたせいで声が掠れて上擦ってしまう。
それでも一定のリズムで寝息を立てる淑乃様は、こうなってはお目覚めにならない。
そっと抱き抱え、ベッドへ横たえた。
離れようとしたが引かれた胸元へ目を遣ると、淑乃様が私のベストを握り締めていらっしゃる。
…本当に襲うぞ?
優しく淑乃様の指を解き、素早くお部屋を後にした。
よく保った、私の理性…
いつまで保つか、全く自信はないが。
…ヤバかった。
淑乃様の無自覚さはどうにかならないか?
ご自分の魅力に気付かず、気取らず気さくで天真爛漫な彼女が好きだ。
でも、彼女にとって私は特別ではない。
身の回りの世話をする為に接する時間が長いから、今は一番気を許せる存在かも知れないが、所詮はただの執事。
だから、この想いは誰にも覚られてはならない。
解ってはいるが、彼女に近付く者・彼女が笑い掛ける者に対して牽制してしまう。
嫉妬なんて子供染みた幼稚な感情に、容易く支配されてしまう。
らしくない。
そう、全く私らしくない。
誰かに頼んで見合いでもするか?
そんなことで忘れられる程度の想いなら、仕事に専念すれば忘れられる。
仕事が覚束なくなるから困っている。
いっそのこと、彼女が早く結婚してくれたら…
お相手が鷹護様では、早くとも後5年は結婚しないだろう。
それでは私が保たない。
仕事が覚束ないのは私のポリシーに反する。
大体、この年で小娘に入れ込むことがおかしい。
彼女は聡様の子だ。
私にもあのくらいの年の子がいてもおかしくない。
一時の気の迷いだ。
大丈夫だと言い聞かせ、淑乃様のお部屋のドアをノックした。
「淑乃様、失礼いたします」
声を掛けたが反応がない。
デモンストレーションに興奮されたご様子から、恐らくお休みになっていらっしゃるのだろう。
一応ご様子を窺っておこう。
再びドアをノックし、お声を掛けてお部屋へ入る。
ソファーから淑乃様の安らかな寝息が聞こえる。
こちらからは背もたれに遮られ淑乃様のお姿が確認出来ない。
ソファーを回り込んで淑乃様のお姿を確認し、一時の気の迷いと誤魔化せない想いが溢れる。
伏せた長い睫が白磁のような肌に影を落とし、僅かに開いた唇に隠れた赤い舌を捉えた。
ゾクリと背筋を何かが走る。
「淑乃様…」
喉が渇いたせいで声が掠れて上擦ってしまう。
それでも一定のリズムで寝息を立てる淑乃様は、こうなってはお目覚めにならない。
そっと抱き抱え、ベッドへ横たえた。
離れようとしたが引かれた胸元へ目を遣ると、淑乃様が私のベストを握り締めていらっしゃる。
…本当に襲うぞ?
優しく淑乃様の指を解き、素早くお部屋を後にした。
よく保った、私の理性…
いつまで保つか、全く自信はないが。

