「お嬢様、もっとお体の力を抜かれて、お楽になさってください」

そう言われましても…
今、私は3人の女の人たちに寄ってたかって、全身くまなく採寸されてる。
いくら女の人たちだけの前でも、ブラとショーツだけの姿は恥ずかしい。
女の人たちはそんな私の気持ちに関係なく、手際良く採寸したデータをノートパソコンに入力してる。

「お疲れさまでございます、お嬢様」
漸く採寸から解放された私に、女の人たちが頭を下げながらそう言った。
「あ…いえ、こちらこそありがとうございます」
私も釣られて頭を下げた。
女の人たちは顔を見合わせると慌てて
「お嬢様がそのようなことをなさられては…」
って、やっぱり困った顔をして、戸惑っている。
「でも私は立っていただけで、採寸してくださったのは皆さんですから…やっぱりお礼を言うのは私の方だと思うんです」
3人の女の人たちの顔をそれぞれ見ながらそう言うと、女の人たちはまたお互いの顔を見合わせて
「お嬢様はとてもお優しくていらっしゃるのですね。わたくしどもは、お嬢様のお世話をさせていただけて光栄です」
とにこやかに言うと、一礼して
「失礼いたします」
と言って部屋を出て行った。

人に何かしてもらったらお礼を言うのは当たり前なのに、お嬢様と言うのは違うのかな?
ヘンなの…
んー…私はお嬢様にはなれそうにないなぁ。

空腹感を覚えて時計を見たら、もう12時近かった。
そりゃお腹も空くよね。
藤臣さんから用があったらベルを鳴らすように、とは言われているけど…
柄とベルの部分に見事な細工が施された綺麗な金属のベルは、鳴らすことが躊躇われる。
だって、なんかお金持ちのお嬢様みたいだし!
実際、お金持ちのお嬢様なんだけど…
これはちょっと、ううん、かなり勇気が要るわ。はぁ…

悩んでいると、タイミング良くドアをノックする音と共に
「失礼いたします」
と言う藤臣さんの声がした。
……助かった~。