「あなた、本当に変わっていらっしゃるわ!執事様の学園でのことをお聞きになって、そのようなリアクションをされた方は初めてですわ!」
二階堂さんは何度もそう言っていたけど、最後には
「でもわたくし、あなたのそのようなところが嫌でなくてよ。また明日、学園でお会いしましょう」
と私に抱き付くと帰って行った。
そりゃ、何だか色んなことを聞いて驚いたけど…
パパなら全ての言動に納得出来てしまうから。
いつもマイペースでのんびりしていて、周りの目とか気にしない人だったし。
パパが唯一緊張したのがママにプロポーズした時だって聞いたことを思い出した。
御曹司の身分を捨てて、使用人だったママと駆け落ちした訳だから、流石のパパも緊張しただろうな。
ママもよくついて行ったなぁ…
お腹に私がいたから?
パパとママの愛情に、今更だけど感謝。
私、ちゃんと頑張るからね!
時間が経つと、藤臣さんのすごさに驚いた。
氷雪の君って言うのは全然想像出来ないけど。
だって藤臣さんはいつだって優しいし、笑顔が素敵だし。
笑顔が素敵だから、まさかパパと同い年だなんて思いもしなかったし!
どう見ても30くらいにしか見えない。
それは氷雪の君とは関係ないけど。
パパと同い年ってことに驚いて、何の記録保持者か訊きそびれちゃったな…
明日、学園で二階堂さんに訊いてみようかな?
それにしても…そんなすごい人に私はお世話をしてもらっているの?
何だかすご過ぎて実感が湧かないな…
確かに藤臣さんは、痒いところに手が届くって言葉がピッタリのお世話をしてくれる。
私がお願いしなくても、先回りして希望以上のことをしてくれる。
時々、藤臣さんはエスパーなんじゃないかって思うくらい。
お仕事熱心で洞察力がすごいんだろうな。
でも、藤臣さんは全力で唯一の主人に仕えたいって思っているのよね?
私なんかじゃ物足りないよね…
お祖父さんの命令で私のお世話をしてくれているけど、本当は他の人がいいんじゃないかな?
そんなことを考えて、私は寂しくなってしまった。
パパとママに頑張るって誓ったばかりなのに。
ベッドに潜り込むと、私は涙が止まらなくなってしまった。
このお屋敷に来て初めて泣いた。
パパとママのお通夜の時以来。
泣いたらパパとママが成仏出来ないと思ったから。