「お待たせいたしました」
藤臣さんとメイドさんが、銀色のワゴンにおやつとティーセットを載せて運んで来た。
どうやってここまで押して来たのかなぁ?
バリアフリーとか?

無駄のない洗練された動きで、テーブルの上に豪華なおやつとティーセットが並べられる。
「本日はプレーンスコーンとクーベルチュールのガトーショコラとローストポークのサンドイッチとHarrodsのフラワリーアールグレイでございます。プレーンスコーン用にHarrodsのジャムを幾つかご用意させていただきました」
藤臣さんがまた分からない言語で話している…
目の前に広げられた物を見れば、何となく分かるからいいけど。
「RosePetalJellyはあるかしら?」
向かいに座ってる二階堂さんまで、分からない言語で話し始めた…
「畏まりました、少々お待ちください」
藤臣さんは一礼すると、温室を出て行った。
「ふふ…厄介払いをしてしまいましたわ」
楽しそうに二階堂さんが微笑んだ。
綺麗なんだけど…何だか黒いよぅ!
「あら、このサンドイッチ美味しいわ…そこのあなた、レシピを調べて教えていただけるかしら?」
二階堂さんはメイドさんに話し掛けている。
マイペースな人なのかな?
メイドさんは一礼すると、素早く温室を出て行った。
入れ替わりに藤臣さんが戻って来た。
「お待たせいたしました、RosePetalJellyでございます」
白い小さな器に入ったそれは、バラのジャムだった。
「ありがとう。わたくし、プレーンスコーンにはこれと決めておりますのよ」
ニッコリと藤臣さんに微笑み掛ける二階堂さんがまた黒く見える…
「お礼のお言葉など勿体無い。お嬢様がお招きになられたお客様は、わたくしにとっても大切なお客様でございます。出来うる限りのお持て成しをすることが、わたくしの務めでございます」
ニッコリと二階堂さんに微笑む藤臣さんも黒く見える…
なんでこの2人は仲が悪いのかなぁ?
見えない火花が散っているんですけど…

「あ、本当にこのサンドイッチ美味しい!」
一口サイズに切られたサンドイッチは、食べやすいしお肉もサッパリしていて本当に美味しい。
今まで火花を散らしてた2人が、私を見て優しく微笑んでいることに気付かず、私はサンドイッチに夢中だった。