恋人は専属執事様Ⅰ

ここ聖真学園は、お金持ちの生徒の一貫教育だけではなく、その生徒に仕える使用人の育成も目的らしい。
朝見た燕尾服やメイド服みたいなデザインの制服を着た生徒たちが、執事メイドクラスなのだと教えてもらった。
二階堂さんや私たちは紳士淑女クラスだと言うことも分かった。
そして、紳士淑女クラスの生徒は執事メイドクラスから1人、専属契約を交わす規則があることも教えてもらった。
学園生活では、専属契約を交わした生徒に身の回りのお世話をしてもらうとか。
要するに実習ってトコかな?
優秀な執事やメイドと専属契約を交わして、所謂『青田買い』みたいなこともあるらしい。

「そんなに難しく考えなくてもよろしくてよ?松本さんでしたら執事候補生が放っておく筈がありませんもの」
楽しそうに笑う二階堂さん。
意味が分からない私が黙っていると、二階堂さんは私に優雅な微笑みを向け
「そうですわね…あなたは分からない方がよろしいですわ。わたくし、あなたともっと仲良くなりたいですもの。執事候補生に邪魔されるのは御免ですわ」
とまた分からないことを言った。
でも、もっと仲良くなりたいって言葉が嬉しくて
「ありがとう、二階堂さん。私ももっと二階堂さんと仲良くなりたいな」
と笑顔で言った。
「もう…松本さん、それは反則ですわ!」
そう言って、二階堂さんはまた私に抱き付いた。
この人は抱き付くのが癖なのかな?

その時、ブレザーのポケットに入れたケータイが鳴った。
この着信音は藤臣さんからだ。
「二階堂さん、ちょっとご免なさい」
と断って、電話に出る。
『お嬢様、失礼いたします。そろそろアフタヌーンティーのお時間でございますが、まだ校舎の見学はお済みではございませんか?あまり初日からご無理をなさいますと、お疲れが溜まってしまわれます』
藤臣さんがまだ新しい環境に慣れてない私を気遣ってくれているのが分かる。
お屋敷にもまだ慣れてないからなぁ…
そんなことを考えながら藤臣さんの言葉を聞いてると、二階堂さんが膨れっ面になっていた。