「詩織、俺にもちょーだい」
雑誌を読んでたかと思ったら急に近づいて、あたしの返事も聞かずに食べていたアイスを奪っていた。
いくら、大切な弟だからってこれを見逃す訳にはいかない。
なんたってこれはこの夏季限定のカリカリ君シリーズチョコパフェなんだもん。
このまま奴の手のうちに入れておくにはいかない。
あたしは…正義の味方、シオパンマンと。
「返せ!!悪の侵略者、レイめ!」
戦闘態勢に入るため、座っていた椅子から立ち上がりポーズを決めた。
零の手に無防備に握られているアイスに素早く手を伸ばす。
が、あたしより何センチも背が高い零が腕を上に上げた為あえなく失敗。
「ず、ずるいぞ!!アイスを手の届かぬ境地にやるとは!」
悪あがきだなんて分かってたけど、あたしは叫んだ。
零にびしっと指さしながら言うと、余裕の笑みでアイスをぺろぺろと舐めてた。
「だってまだ食べたいんだもん。詩織に渡したら全部食べちゃうんでしょ?無理にでも」
頭の中を読まれて、手がびくっとなる。
「…そんな事ないよ。大人しく渡してくれたらまた上げる」
よし、噛んでない。
顔はきっと優しい笑みを浮かべている。