町から街へ。

幼かった私は、母親の手の温もりを感じながら父親に会うために電車に乗り向かう。

たくさんの人が行き交う駅を抜けゆく。
当時の私の頭の中は父親のコトでいっぱいだった。

大きな百貨店の前でお母さんは私に言うの。

「もうすぐお父さんに会えるよ。」

その言葉を信じて私は買ってもらったアイスを片手に時間が過ぎるのを待つ。

そして―、
雪が降ってきた。
生まれて初めてみる雪は小さくて、冷たくて…。
だけど、暖かかった。

私の小さな手の中に迷いながら落ちてきて、少しばかりの温もりを奪って消えた。