でも先生はあたしの冷めた反応なんておかまいなしに、
笑えない冗談を続ける。
「ムリなことはないだろ。おまえは16過ぎてるし。結婚して、俺のところに来てくれないか。
そうしたら、俺が全力でおまえを守るから」
ああ、そうか……
冗談を言ってるわけじゃないみたい。
先生はやっぱりあたしに同情していただけ。
名取の父親に犯されてきたあたしを、
かわいそうに思っただけだ。
「ばかみたい。同情で結婚なんてできるわけないでしょ」
「同情じゃないから心配するな」
「いい加減にしないと、姫衣が泣くよ」
「浅倉のことは関係ない。俺が泣かせたくないのは、おまえだけだシキ」
あたしの好きな声が、
あたしの名前を呼ぶ。
あたしだけだと、愛らしきものを囁く。


