ひどく、痛そうな顔。
どうしてそんな顔をするの?
もういいんだよ先生。
もう自由になっていいの。
解放してあげるから。
あたしという毒にしかならない存在は、
きれいに消えてあげるから。
「あたしのことなんて、忘れていいよ。
あたしはもう……先生と姫衣の邪魔はしないから」
「おまえは勘違いしてる!」
「勘ちがい……?」
「俺が好きなのは浅倉じゃなくて、おまえだ!」
先生の叫びはまた、すぐに風に飲みこまれた。
あたしは驚きすぎて、なにも言えなくなる。
この人はなにをそんなにまじめな顔で、
思いきり冗談を言うのだろう。
ほんの少し前まで死のうとしていたのに、
つい笑いがこみあげてきてしまった。
「あはっ! なに言ってるの先生?」
屋上のへりで、おなかを抱えて笑った。


