地上23階建ての本社ビル。
ここから落ちれば、確実に死ねる。
自分の終わりが見えた時。
頭に浮かんだのは、先生との幸せな記憶。
かりそめでも、たしかにあったあの夢のような日々。
「もう1度、先生のベッドで一緒に眠りたかった……」
呟いて宙へと踏み出そうとした時、
背後で扉が開く音がして。
「シキっ!?」
風の音よりもつよく、
その声が響いた。
出しかけた足が止まる。
信じられない気持で、あたしは振り返った。
「どうして……」
呆然と、あたしは先生の顔を見た。
乱れた黒髪、スーツ、汗の浮いた額。
荒い呼吸を繰り返す先生。
まさか、階段を駆け上がってきた?


