あたしの唯一の失敗は……
「先生を愛してしまったこと」
憧れと思慕でとどめておけばよかったのに。
それができなかった。
あたしは結局、なにひとつ願いを叶えることができなかったの。
幹生はあたしの髪をなでながら聞いていたけれど、
ふとその手を止めて言った。
「そういえば、今日アンドレがおまえのことを聞いてきたよ」
「え……」
「俺に聞いてくるくらいだから、よっぽど気にしてるんだろうねぇ」
幹生の甘い声に、またあたしの心が揺れ動きはじめた。
先生……
姫衣とのことなんて聞きたくはないけれど、
最後にもう1度だけ、先生の声が聞きたかった。
最後に、もう1度だけ。


