けれどあたしの願いは叶わなかった。
名取があたしを両親のもとへやることを、拒否したから。
「名取は両親にまた多額の金を渡したの。両親は……あの人たちは、あたしを見捨てた。
あたしはまた、金で売られたの」
それからは、
姫衣と連絡をとることもできなくなった。
けれど中学に上がってしばらくすると、
姫衣の評判を聞くようになった。
学力テストやピアノのコンクール、書道の全国展などで、
姫衣は非凡な才能を発揮した。
両親があたしを売って得たお金で、
姫衣は大切に育てられていた。
そして、
姫衣の才能を聞きつけた名取は、
今度は姫衣を欲しがった。
あたしと姫衣を、交換しないかと
浅倉の家に持ちかけたのだ。


