名取は女系の一族で。
男子は長生きしないとされ、家業を継ぐのは女と決まっていた。
当時名取の経営の中心にいたのは会長とその次女。
長女は男と駆け落ちして行方をくらませていた。
けれど次女……あたしの義母は子どもをつくることのできない体で。
名取は女の子を、
それも優秀な子どもを欲しがっていた。
そして目をつけられたのはあたしと姫衣だった。
義母は子ども嫌いで、必要分しか引き取りたくなかったのだ。
離ればなれになることを聞かされ、あたしたちは泣いた。
けれど施設職員に説得され、
あたしが名取に引き取られることになった。
あたしは売られたのだ。
多額の寄付金と引き換えに。


