「唯一の肉親に裏切られて、悲しくて死んでしまいたいとすら思いはじめた時に、
親が迎えに来たんです」
浅倉の両親は、事業に失敗して夜逃げをし、
子ども2人を抱えて生活していくことができずに、双子の赤ん坊を捨てたらしい。
だが一から出直して10年で、まともな生活を送れるようになり、
孤児院に双子を迎えに来た。
しかしそこには、双子の片割れしかいなかった。
「何度も一緒に暮らそうって言ったのに、オルハは帰って来なかった。
時々顔を出すことはあったけど、名取の家から抜けるなんて、考えもしてなかったんですよ」
本物の家族より、裕福な偽物の家族を選んだ。
浅倉は怒りと憎しみをこめるように、低い声で静かに語った。
たぶん、浅倉もシキのことを愛していたのだろう。
愛が深かった分、憎しみも大きかったのだ。


