「あたしたちは……孤児院育ちなんです。1歳に満たないうちに、親に捨てられて。
それから小学生まで、あたしたちは孤児院で育ったんです」
そんな……いまでも、そんな話があるのか。
にわかには信じられず、
俺は言葉をなくしてただ、浅倉の声に意識を向けた。
「小学生2年生の時、オルハだけ名取の家に引き取られました。
あの子は……あたしを捨てたんです」
行かないでと言ったのに。
ずっと一緒だと信じていたのに。
浅倉の目から、たまっていた涙がこぼれ落ちる。
「自分だけ、孤児からお金持ちのお嬢様になって。いじめられたり、お金に困ることもない、なに不自由ない生活を手に入れて……」
迎えに来るなんてうそぶいて。
結局迎えになんて来なかった。
さみしくても、待っていたのに。
また一緒になれるって、信じていたのに。


