「……して、」
「え?」
「どうして戻ってきたの!?」
ネクタイがほどかれて自由になり、
あたしはかけられた上着を先生に投げ返した。
「どうしてあのまま帰らなかったの!!」
「……そんなもん、おまえの様子がおかしかったからに決まってるだろうがっ!!」
なぜあたしが怒っているのか、先生には理解できないのだろう。
せっかく助けてやったやつに怒鳴られて、
わけがわからないという顔をしている。
「俺が戻ってこなかったらおまえは、」
「あんなのあたしは慣れてるんだよ! 別に殴られようが犯されようが、どうだっていい!」
「慣れてるって……まさかあの男に」
「だからそんなことはどうだっていいの! それより先生だよ!」
あの男はなにをするか本当にわからない。
いままであいつに消されてきた人間は少なくないんだから。


