お願いだから、来ないで。
なにもせずに帰って。
あたしを、見ないで!
あたしの心の叫びは、届かなかった。
「シキ……っ!?」
部屋に入ってきた先生が、
あたしの姿を見て驚愕の表情をつくる。
あたしはもう、
本当にもう、
消えてしまいたいと思った。
死ぬだけじゃ、ちっとも足りない。
「おい! 勝手に上がりこんでなんなんだ!
警察を呼ぶぞ!」
「なにが警察だ……っ!」
先生が、男の体を壁に強く押しつけた。
振動で、棚が音を立てて揺れる。
「こんなことをしておいて、なにが警察だ! なんだこれは!
父親だなんて、よくもふざけた嘘を!」
「俺は正真正銘父親だ! これは言うことを聞かない娘をしつけているだけだ!」


