もう1度、インターフォンが鳴る。
男は慌てたようにネクタイであたしの手を縛り、
口に破れたシャツを突っこんできた。
あまりの苦しさに涙が出る。
「絶対にしゃべるなよ。おとなしくしているんだ」
そう命令して、男が玄関に向かう。
その時、
「名取さん? いないんですか?」
玄関のドアを叩く音のあと、
あなたの声が聞こえた。
涙でぐちゃぐちゃな顔を、玄関に向ける。
縛られた体が悲鳴をあげたけれど、それどころじゃなかった。
先生……っ!
「名取さん、安藤です。いないんですか?」
今度は強くドアが叩かれた。
男の舌打ちが聞こえてくる。
「いま開ける!」
いらだちを露わにした声のあと、
ドアが開けられる音がした。


