いつの間にか、シキは表情をがらりと変えて、
愛想よくメンバーたちに微笑んでいた。
「できるのは、ピアノとヴァイオリンかな」
「へぇ! 聴いてみたいね~!」
「どれくらいやってるの?」
「たいしたことないよ。姫衣の方が、ピアノもヴァイオリンも全然上だし」
名前を呼ばれ、浅倉がびくりと肩を揺らす。
浅倉は、ピアノしかできないはずじゃ……。
「えー? 姫衣ヴァイオリンも上手いの?」
「知らなかった! なんで言ってくれないの~?」
「それだけじゃないよ。チェロ、フルート、クラリネットも完璧だもん。
ねぇ、姫衣?」
「なにそれ!」
「うそっ」
さわぎはじめる仲間の中で、
浅倉は妙に居心地の悪そうな顔になる。
ああそうか。
浅倉はそういう完璧な自分を、隠しておきたかったのかと、
俺はようやく気付いた。


