「……裏切った? あたしが?」
言われたシキも、驚いたように目を見開く。
しかし少しして、彼女が鼻で笑った時。
ガチャリと扉が開かれて、
ぞろぞろといつものように、愛好会のメンバーが音楽室に入ってきた。
「あれ? 姫衣と……」
「あ! 名取さん!?」
「わーっ! 名取さんはじめまして!」
「やっぱり姫衣と似てる~っ」
「なになに? 名取さんも愛好会入ってくれるの?」
空気を読もうとしない女子たちは、
すぐにシキを取り囲んで、得意のおしゃべりをはじめる。
「名取さんなら大歓迎だよね~」
「名取さんも姫衣みたいにくわしいの?」
「楽器は? なにやってる?」
ぴりぴりとした空気が、
空気の読めない女子たちによって消えていく。


