先生はようやく動けるようになったみたいで、
あたしから距離を取って、窓際で煙草を取り出した。
懐かしい動きで煙草を1本出して、口にくわえる。
「先生。学校でもたくさん吸ってるの?」
あたしが聞いても先生は答えない。
でも、火をつけようとした時。
「安藤先生。ここ禁煙です」
姫衣の優等生ぶったセリフに、先生は手を止めた。
そのまま黙って煙草をしまう。
生徒に言われてしぶしぶ、か。
ほっとした。
あたしと姫衣の間には、まだ大きな差があるらしい。
「進学のこと、まじめに考えたんだ」
「進学?」
「そう。前の学校より、ここの方が進学校としてレベル高いでしょう? 国立行きたくて」
「オルハが……?」
疑いのまなざしに苦笑する。
姫衣があたしのことをどう思っていたのか、よくわかった。


