先生はたしかにあの日
あたしを選んだ。
でも、姫衣への気持ちが完全に消えたわけではないと思う。
だからきっと、本妻と愛人に板挟みにされているような気分なのかもしれない。
どちらが本妻で、どちらが愛人かは知らないけれど。
「プライベートなことだから。別にあたしと先生が知り合いで、なにか問題があるわけじゃないでしょ?」
「それは、そうだけど……」
「それより、本当に久しぶり。これから同級生としてよろしくね」
心にもないことを言って
心のこもらない笑顔をつくる。
そんなあたしの態度に、姫衣は表情をくもらせた。
「どうしてうちの学校に来たの?」
「……あんたも質問ばっかりだね」
冷たい声で笑ってしまう。
いちいち答えるのも、少し面倒になってきた。


