ああ……
先生の匂いだ。
マイルドセブンの香りがスーツに染みついてる。
胸に頬を寄せれば、先生の体温と胸の鼓動を感じることができる。
少し、緊張してるようだ。
「シキなんて女はいないよ」
「知ってる。おまえの名前は名取織羽(なとりおるは)だろう。転入生が来ることはわかってた。
まさかそれがおまえだとは想像もしなかったけどな」
「うれしい? あたしに会えて」
「ふざけるな」
「うれしくないの? ちっとも?」
見上げると、先生は気まずそうに目をそらした。
揺れてる心が手に取るようにわかる。
少し、うれしかった。


