職員室の扉を閉めると、不意に笑いがこみ上げてきた。
本当に、あたしはなにをやってるんだか。
名取の家族に睨まれてまで。
そんな風に思える冷静な自分がいるのもまたおかしい。
自嘲しながら生徒玄関の方に歩いていたら、
急に横から手が伸びてきて、ぐいと腕を引っぱられた。
ひと気のない階段に連れこまれて、
驚いたのは一瞬。
相手はあたしの待っていた人のひとりだった。
彼はあたしを見ず、ただ階段を駆けあがり、
近くにあった教室にあたしを押しこんだ。
そこは音楽室だった。
少し狭い感じがするけど、グランドピアノがあって、黒板には5線譜が。
楽器のケースもいくつか並べておいてある。
明るい部屋だ。


