まばたきも、呼吸すらも忘れて。
俺は石のように立ち尽くし、
廊下の向こうからこちらに歩いてくる人物を、食い入るように見つめた。
隣りのクラスの担任のうしろについて、歩いてくる女子生徒。
うちの学校の制服は、男女とも緑ベースだ。
けれど、その生徒は真っ黒な制服を着ていた。
真っ直ぐに
上品に
猫のようにしなやかな歩き方。
見覚えのある、歩き方。
俺は目を見開いた。
黒のワンピースタイプのスカート。
短い丈の黒のジャケット。
白い丸襟、赤い大きなリボン。
この辺りでは有名な、全寮制私立女子高の制服だ。
うちの男子の憧れの的でもあるらしい学校。
他の生徒たちが騒ぎながら、
その異なる制服の女子を遠巻きに見ている。


