【短編】距離の仲



昔であれば並べば両目が出来ていたのに。


もう、昔とは違うんだ。


「諦、少し下がって。両目にならないじゃん」


「加奈がチビだからだ」


「諦が勝手にデカくなったんでしょ」


あぁ言えばこう言う。


今度は僕から溜め息が出た。


それから二、三歩下がり両目に見える位置に立つ。


「これでいいだろ」


「おっけー」


本当に、加奈は何がしたいんだろ。


こんな事の何が楽しいんだろ。


束の間の懐かしさが欲しかったのか。いや加奈の事だから突発的なものだろうけど。


前には、当然の事ながら加奈がいる。


距離はたかだか二、三歩。


だけど大きな距離だ。


加奈の隣に僕はもういないんだ。


それを認識させるには充分過ぎる距離。


……加奈の背中に声を掛けられない僕がいた。


今に限った事じゃない。


いつから僕は加奈に話し掛けられなくったんだっけ。