パタパタと忙しない足音がした。


やっと、来たか。


読んでいた本に栞を挟み、鞄に放る。


それからすぐにガラガラと教室のドアが開いてーー


「ごめん!!待った!?」


と、さっきまでバカ共を虜にしていた声が加奈と一緒に飛び込んできた。


うるさい。とは思ったけど反応するのはいつも僕じゃない。


「ヤッホー加奈ちゃん!!今日の放送も聴いたよ!!すげぇヤバかったよ!!」


「あ、どもです」


「ねぇねぇ、加奈ちゃんさぁ。たまには諦となんかじゃなく俺等と一緒帰ろうよ」


「あ~。今度ね」


……。


教室の入り口にバカ共が、甘い物を見つけた蟻みたいに群がる。


まるでアイドルだ。


てかまぁ本当にこの学校ではアイドルだけどさ。


顔も、声も綺麗で男女問わず人気者の幼なじみ。


自慢ではある。


けどその反面、嫉妬もあった。


今だって、そうだ。


だから群がるバカ共を押し退けて加奈の手を掴んだ。


「行くぞ」


「へ?」


掴んだ手を離さないよう、足早に教室を後にした。


バカ共の罵声を別れの挨拶にして。