狭「ったく…なにやってんだ。ほら。」
手をさしのべてくれた狭哉。
私はその手を取ろうと手を伸ばしたその時…
あの記憶が蘇る。
狭哉が無理矢理私にしたキス…
私にとってあれは許せない。
確かにあのまま祐輔とキスするのもいやだった。
だからといって、止めるのに、他に手はなかったの??
私は伸ばした手を引いて、自分で立ち上がった。
「いらない。」
私はそのまま自分の部屋に帰った。
その時、狭哉が何れだけ傷ついた顔をしていたかも知らずに。
部屋に戻るとまだ透センパイが私の椅子で寝ていた。
正直、可哀想で起こすのは気が退けたが、このままではどうも落ち着かない。
「センパイ、起きてください…。」
透「………ん………。あぁ、希沙かおはよう。」
眠たそうにつけていた眼鏡をはずし、目を擦る。
小さなあくびをして、もう一度眼鏡をかけた。
開いていた本は閉じられて、センパイの手に握られていた。

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