「私が二条に通っていた頃は、まだ随分とお小さくていらっしゃって……兄君の後をいつもついてまわって……」

そのように、くすくすとお笑いになりますので、二の君は、恥じらいますように顔をよそにお向けになって、

「そのようなことは……」

と、口ごもりにおっしゃいますのは、

「私が追っておりましたのは、いつでも、香り高き月の背中ばかりですよ……」