西の対から見える紅葉は、なるほど、渡殿からの見え方とは、また違って美しく、それをまた、かの月の姫は、毎日愛でていらっしゃるのかと思われますと、二の君は、しずしずと足音を忍ばせてお歩きになるなかでも、ほう、と息のでるのを、おとめになれずにいらっしゃるのでした。

それで、例の女房も、時折、若君を振り返っては、

「二の君様、お早うなさいませ」

などと申し上げているうちに、この二方は、この対の、もうずいぶんと奥にまで進んでいるのでした。