念入りに鏡の前でチェック。


「…あっ!クマ出来てるっ」

慌てて瞳の下をマッサージ。


葵ねぇと一緒にかけた緩いウェーブは、胸の辺りで揺れた。



「…心音?どっか行くの?」


「うんっ!ちょっとね」


「そんな格好で?」

葵ねぇは怪訝そうな顔でわたしを見る。


「あー、ばー」

葵ねぇに抱えられた、赤ちゃんの小さな手を軽く握る。

「はるたんバイバーイ」


足元には、わたしに着いて歩く女の子。

「みーたんどこいくのー?」


「しずくーっ!?着替えるよー!」


「ほら、呼んでるよー。じゃ行ってきまーすっ」


「みーたんいてらっしゃい」

まだうまく話せない子供に見送られ、わたしは家を飛び出した。


時間は昼前。


うん、昼には着くかな。



自転車を漕ぐ体に受ける春の風は、まだ冷たくて、顔が強張るのがわかる。


せっかくセットしたヘアスタイルも、こんなんじゃ台なしだよ。


なんて思いながら目的地へと走らせる。