床に繰り広げられている撮影器具を避け、カメラに映らない教室の隅の窓を寒さに絶えかねて密かに閉めようとした時だった。






「いやぁあーっ!!!!」






それだけでも人を殺せそうな奇声が鼓膜を激しく刺激した。



声の発信源からはそれなりに離れているものの、頭痛が起きそうなほどの威力だ。隣なんかにいたら絶対に鼓膜が破れていただろう。




奇声の主である監督兼台本担当の深川を振り返ると、哀れ、隣に立っていた男子がふらつきながら床に倒れたところだった。





そんな男子に辺りにいた生徒たちは「大丈夫かっ」と声をかけながら駆けよっていく。




けれど深川はそれには目もくれず、衣装でもある制服のワイシャツを脱ごうとしている観月にズカズカと迫っていった。




なんでも、今回撮る映画は『女生徒のための映画』とかなんとか言う名目で。


そんな映画の出演者としては、男として登校するようになってからいっそうファンの増えた観月は恰好の獲物と言いわけだ。