あたしは変な病気だし、わがままで一人では何も出来ないし。

こんな自分を全面的に守ってくれるなんて、これ以上の安心はないだろう。




咲之助は何を考えているのか分からないから。
やることなすこと危うくて、こうやって安心をくれる言葉もかけてくれなかった。







咲之助のことはまだ好き。



だけどもう後戻りは出来ない。
咲之助を突き放したあの日には、もう戻れないよ。






桃色のほっぺの寝顔にふざけてキスしたのは確か6歳の時。



気付かれないように気付かれないように、そっと近寄っていった時の胸の高なり。

すごくどきどきしてた。
すごく好きだった。




そんなあの時の気持ちは決してふざけてなんかいなくて、小さかったから大人じゃなかったから、気付かなかっただけ。




そうあの時の気持ちは間違いなく…





「…好き」





あたしが心のなかで呟いたのと同時に観月はそう言った。




観月の手が頬を包んで、心地よい世界に落ちていく感覚を覚えた。
見たくないものから逃れて、"堕ちていく"ようなそんな感覚を。





目を瞑ったら、きっともう怖いものは見なくて済むだろう。
これからは観月が守ってくれるのだから。






「目、瞑って」




観月にそう囁かれるままに、あたしはゆっくりと目を閉じる。




すると唇がそっと重なってきて。

刹那、咲之助と過ごしてきた今までの記憶が、全て真っ黒に染まっていった―。





            #