【恋文】

一足先に
わたくしは
地獄を見て参ります

あなた様を
置いてゆく
わたくしを
どうかお許しにならないで

あなた様が
共に生きようと
わたくしに
おっしゃってくださった事

わたくしは
未だに覚えております
星が輝く夜に
あなた様は
盃を取って
夜空を見上げながら
そっと
おっしゃってくださいました

愛など知らぬわたくしを
あなた様は
とても愛してくださった

わたくしは
この世に産み落とされ
初めて
愛される喜びを
あなた様に
教えていただきました

わたくしは
あなた様の愛に
見合うほどの愛を
あなた様にお返しできましたでしょうか

あなた様の
優しい両手は
何時も
冷たいわたくしの手を
暖めてくださった

わたくしが
何処かに身を隠す度に
必ずあなた様が
わたくしを見つけてくださった

わたくしは
あなた様と共に
果てることが
叶わぬ女で御座いました

それでも
わたくしは

わたくしは


共に
歩むことが出来ずに
申し訳ありませぬ

わたくしは
一足先に
逝って参ります

あなた様は
どうかごゆるりと


愛してくださって
有難う御座いました
わたくしは
この世で一番の
果報者で御座います

最期まで
言えぬ言葉でした

わたくしは
あなた様を

お慕い申し上げて居ります

(愛して居ります、)
(最期まで口に出せぬ言葉に御座いました)