【月明かり、夢唄】

 置いていかないで


  泣きながら叫んだ言葉



 独りにしないで


  泣きながら叫んだ言葉



 蝶は ごめん と言いながら


  飛んで行った





 膝をついて項垂れて

  嫌だ嫌だと 首を振り続けて


 ようやく顔を上げれるようになった頃

  わたしには誰も居ないことを気づいた


 歩けなくなった

  走れなくなった

   立てなくなった






 ―――。

  だぁれ


 ―――。


  後ろを振り向いた


   人生の友が立っていた




  人生の友は哀しく笑って
 

   両手を広げた


  其処へ駆け寄って


   わんわんと腕の中で泣いた





  もう誰も置いていかないで



  人生の友は



  抱きしめて頷いた







 蝶がひらり と舞った気がした



  今は 蝶と笑い合える



 夢の中 夢幻だと知っていても



  月が照らす夜 わたしが歌う夢唄