「千幸、」 「……」 「千幸っ」 「…っあぁ…ごめん、何?」 「お父さんの仕事が終わる頃だから、迎えに行ってくるわね」 「うん…わかった」 あの日、お父さんはアメリカから帰ってきて、一時的だけど日本で仕事をしている。 お母さんは私をちらっと心配そうに見て、病室を後にした。 あの日から、日向が病室に来ない…。 いつの間にか窓から中庭の小道を見るのが、習慣になってしまった。 日向がいつも走ってやってくるあの小道を見るのが…。