だけど、悩殺寸前のあたしをよそに撮影中の沙絢ちゃんは、握る手をゆっくり離して、


『それじゃあ、また撮影しなきゃだから行ってくるね』


と言って、着替え室らしきところに入っていった。




それと同時に、撮影の休憩をもらった紫音があたしのところにやってきた。




「沙絢と仲良さげだったじゃん」


「うん!アドレス交換しちゃった!てか、握手もしてもらっちゃった!しかもなんか知らないけど、あたしと沙絢ちゃん友達なんだって!」


「…興奮しすぎ」


「だって興奮するに決まってるじゃん!憧れの沙絢ちゃんだよ?!あの沙絢ちゃんだよ?!あの沙絢ちゃんの名字知っちゃったんだよ?!」


「……」




それからしばらくあたしの興奮は収まらず、


呆れながらもあたしの永遠と続くような興奮話を黙って聞いてくれた。




永遠と続くかと思ってた興奮話は、紫音の『もう話終わった?』の一言で、意外とあっさりと終わった。




そして紫音はすでに今日の分の撮影を終わらせたらしく、着替え室らしきところへと私服に着替えに向かった。



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