ホームに上がると、丁度電車が滑り込んできた。
待っている人に流されるがまま、電車に吸い込まれていく。
満員電車は、私に安らぐ暇をも与えてはくれなかった。
酔っ払いの酒臭さに酔いそうになりながら、やっと到着した地元の駅。
人混みをかき分けながら、ギリギリの所で外に飛び出した。
本当に嫌になる。
パンパンとコートのシワを直し、改札口へと向かった。
改札を出ようとした瞬間に、ポケットに入れていた携帯電話が震えだす。
定期をしまいながら、要領よく携帯電話を開くと、ディスプレイには『涼』の名前が書いてあった。

