そこで、朝露は、ようやく自身のお役目を思い出しまして、しずしずと文箱を差し上げまして、

「私は、名もなき文遣いなれば、こちらの西の方様に、我が主よりのお文をお届けにあがりました」

と、つかえもあやまちもせずに、教えられたとおりの口上を述べますのは、この朝露の利発さでありましょうが、やはり、どことなくぎこちなさの感じられるのを、若者は、不思議にお聞きになるのでした。